小泉首相の「謝罪と反省」

April 23, 2005  [ 外交問題 ]

1.小泉首相が謝罪と反省

22日、アジア・アフリカ会議(開催地:ジャカルタ)において小泉純一郎首相が「謝罪・反省の表明」を行ないました。ざっくりと要約すると

日本がかつて植民地支配と侵略により多くの国の人々に多大の損害と苦痛を与えたことを反省し、お詫びの気持を表明するとともに、戦後一貫して軍事大国とならなかったこと(平和主義の立場を堅持したこと)を強調。その上で、今後も世界平和に貢献していく決意する、といった内容となっているようです。

この演説を私は以下の点から基本的に支持します。


2.村山談話を踏まえた謝罪

歴史上の事実については評価が分かれる部分もありますが、かつて日本が他国に侵略しようと戦闘行為を起こしたことは事実であると私は認識しています。これを反省することは国家として当然のことですし、それを世界に向けてしっかりとアピールしない限り、日本は孤立するしかないと思います。

対 国内
謝罪したことについて国内には当然、異論もあるでしょう。しかし、今回の「謝罪と反省」が村山談話の域を越えるものでない以上、激しい批判は起こりにくいだろうと思います。

対 国外
また、村山談話を引用していることで、諸外国に対して「これまでも日本が謝罪と反省の意を表明してきた」という事実をアピールすることができます。 アジアの一部の国(中国・韓国など)はかねてより、「日本は謝罪しない」「日本は反省しない」とただ闇雲に連呼するばかりですが、こうした類の批判に対する日本からの反論、あるいは抗議としての機能が今回の演説には含まれていると思います。


3.国際会議の演説として表明したこと

このところ中国や韓国では支離滅裂な反日運動が盛り上がっています(反日的言動の全てを批判するつもりはありませんけど)。そんな状況で日本の首相が中国や韓国に向けて謝罪や反省の意を表すれば、世界からは呆れられ、また馬鹿にされるでしょう(もっとも、既に充分馬鹿にされてはいますが)。

しかし今回、小泉首相は特定の国家・国民に対してではなく、あくまで世界の国々に対して謝罪・反省の意を表明しました。

これは手段として適切であっただけでなく、今後、中国や韓国の一部による「日本は決して謝らない」といった事実と異なる批判を封じるという意味においても有効な方策であったと思います。


4.難癖をつけるなら

小泉首相は「戦後、日本が軍事大国とならなかったこと」をアピールしたようですが、ここまで言うことが必要であったのかは少々疑問です。

この先、数年の間に日本では国防のあり方が議論されることになります。当然、自衛隊を「軍隊」と明言べきかどうか、という問題も真剣に話し合われなければなりません (結論がどちらであるにせよ、この問題は国民によってきちんと議論されなければならないと私は考えています)。 その際、今回の首相の演説が足枷になりはしないかと若干心配です。 ―― 中国や韓国がこの点を取り上げ、ジャカルタでの小泉演説は嘘だった、などと言い出しかねませんから。


<参考>
アジア・アフリカ首脳会議における小泉総理大臣スピーチ 外務省


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竹島問題 3(そして物申す)

April 15, 2005  [ 外交問題 ]

1.韓国政府 御中

私は、韓国の国民が竹島(韓国名:獨島)の領有権を主張すること、そしてそこを占拠することを一方的に非難するつもりはありません。国民が領土に関して自国に有利な発言をするのは当り前だし、また、他国と領有権を争っている以上、そこを占拠し、それを既成事実化しようとすることもひとつの戦略としては「あり」だと思うからです。

ただし、竹島問題 1(謂われを考える)竹島問題 2(現在を考える) でお話したように、私個人としては、竹島が日本の領土であると確信しています。

そして以下の点につき、私は韓国政府に抗議します。


2.ささやかなる抗議 1 ― 強奪

韓国政府は、日本が竹島(韓国名:獨島)を強奪したと主張しています。

しかし、竹島問題 1(謂われを考える) を読んでもらえればわかるように、過去の事実として、日本が「竹島の占拠を目的に」暴力などの強制力を行使したことはありません

それに引き換え韓国政府は戦後、竹島を軍事力にも似た「力」(つまり日本の船に威嚇射撃などをなしうる実力を持つ警備隊)によって占拠しはじめ、その占拠を今日に至るまで続けています。韓国政府は、かつての日本における「軍国主義」を忌むべきものとして批判しておきながら、自ら「軍国主義的」ともいえる行動を取ってしまっているのです。韓国政府の言動に、私は矛盾を見るような気がしています。

先ほど私は「韓国国民の竹島占拠を一方的には非難しない」と述べました。けれどもそれは、占拠が平穏になされている場合に限ります。韓国が武力に準じた「力」で竹島を一方的に支配することを私は不愉快に感じています。そして思うのです。

いまの韓国政府に、他国を「軍国主義者」と批判する資格はない、と。


3.ささやかなる抗議 2 ― 政治の材料

竹島問題 2(現在を考える)でお話したように、韓国の政治家が、もっぱら自分達の支持率を上昇させるために竹島問題を利用することを、私は非常に卑劣な行為であると感じています。

国民感情をいたずらに煽ることにより、もしかしたら短期的な国民の支持を得ることはできるかもしれません。しかし長期的な観点に立って考えると、こうした手段は非常に危険です。政治家はよりしっかりと理念を持って国家・国民、そして世界の利となる政治を志すべきだと思います。

とは言っても、韓国内の政治問題について私に口を出す資格はありませんし、日本の政治家をみても・・・  まあ、この問題はこの辺にしておきます。


4.ささやかなる抗議 3 ― 国際司法裁判所

現状をみる限り、竹島問題を日韓両国の話し合いにより解決することは難しいように思われます。とすれば、公平な第三者に介在してもらって解決するしかないでしょう。

そこで日本政府は国際司法裁判所による解決を提案しています。しかし韓国政府はこれを拒否しているのです。事ある毎に竹島(韓国名:獨島)問題を持ち出し、過剰に騒ぎ立てておきながら、日本が解決手段を提案すると韓国はにべもなく拒絶するのです。

韓国の言い分はこうです。「竹島(韓国名:獨島)が我々の領土である以上、裁判などに付き合う理由はない」

しかし、それが理由にならないことは明白です。これはつまり、あるひとつの土地を巡って二者が所有権を主張して争っている場合に、一方当事者が「その土地は私の所有地なのだから問題は全て解決済みだ。話し合う必要はない」と言っているのと同じですから。もし本当にそう思って言っているのなら頭が悪すぎて話になりませんし、そうでないなら卑怯です。

竹島(韓国名:獨島)を自国の領土であると、それほど自信満々に仰るのなら、公的な場において堂々と主張なさればよいでしょう。そして一刻も早く法的なお墨付きをもらうことがあなたの利益にもなるはずです。 と、私は韓国政府に申し上げたい。


5.韓国の悪手

島根県議会における竹島の日制定後、韓国政府は国民の前で激しい怒りを露わにしてみせました。一部の韓国メディアもこの問題を激しい論調で取り上げましたし、驚いたことに島根県議会へ刃物を持って侵入し、自傷するぞとそれを振り回した韓国人議員まで出る始末。

しかしこれは悪手でした。

現在、韓国は竹島(韓国名:獨島)を事実上支配しています。この状況が続くことは韓国にとっては有利なはずです。そして反対に、日本にとっては何のメリットもありません。いや、単にメリットがないだけでなく、韓国政府が竹島を材料に韓国国民の反日感情を煽るといった現状は日本にとって厄介事でしかありません。つまり日本にしてみれば、この問題を早急に解決することこそが得策なのです。

にもかかわらず日本政府がこれまで現状を放置していたのは、この問題を強引に解決することで韓国政府が被るかもしれないダメージを避けようという計算が働いていると思われます。これを政治家や役人の事勿れ主義と呼ぶ人もいるかもしれませんが、実際問題として、韓国の政治が不安定になれば日本にも悪影響が及びます。ですからこれを避けようとする政治判断はそれほど間違っていないだろうと思います。 ―― もちろん裏では韓国にまつわる利権なども絡んでいるでしょうが、この際それは置いておきます。

ただ今回のように韓国がヒステリックに騒ぎ続ければ、日本の世論も大人しくはしていないでしょう。やがて、竹島問題を解決すべきだという国民世論が盛り上がり、政府に圧力を掛けるようになる可能性も高いと思われます。そうなれば日本政府も動かざるをえません。

その場合、日本にはいくつも手があります。国際司法裁判所へ提訴することもそのひとつです(提訴自体は韓国の同意がなくてもできますから)。国際社会の場で日本政府が自らの立場を論理的に説明し、その一方で韓国政府が司法の場への参加を頑なに拒むということになれば、国際社会の一員である(べき)韓国政府は莫大なダメージを被ることになります。


6.私なら

もし私が韓国政府の政策ブレーンであったら、今回のように竹島(韓国名:獨島)のことで大きく騒ぎ立てることは止めたでしょう。そして日本政府と水面下での交渉を進めるべきたと主張すると思います(方向性としては、実を捨てて名を取りにいくものになるでしょう)。

そしてもし私がいま日本政府の政策ブレーンであったなら、なるべく大袈裟ではない形で、しかししっかりと、自分達の立場を国際社会に対し主張していくように進言するでしょう。韓国政府がいまのような態度を取り続ける限り、この問題を棚上げにしておくメリットはありませんから。


<関連>
竹島問題 1(謂われを考える)
竹島問題 2(現在を考える)

<参考>
竹島問題 竹島問題 様
竹島問題 外務省


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竹島問題 2(現在を考える)

April 13, 2005  [ 外交問題 ]

1.怒れる韓国

現在、竹島を占拠しているのは韓国です。

この事態、日本としてはたまったものではないのですけれども、おかしなことに、いま怒って熱くなっているのは日本よりも、むしろ韓国の方なのです。直接の契機となったのは、島根県が「竹島の日」を制定したこと、そして一部の日本の教科書が竹島について「韓国が不法占拠している」と記述したことであると言われています。


2.韓国の主張

竹島問題 1(謂われを考える) でお話したように、韓国は、竹島(韓国名:獨島)が 1905年、日本によって強奪されたと主張しています。

このことが韓国のナショナリズムを刺激する形になっているようです。竹島(韓国名:獨島) が、いわば「日本軍国主義」による犠牲の象徴とされているわけですね。

ただ、韓国の「日本軍国主義批判」自体は今に始まったことでもありません。


3.では、なぜ今 熱くなるのか?

ここ数年、日韓関係は落ち着いていたのに、どうして急にこんなことになってしまったのか、と戸惑っている日本人も多いようです。

まあ、現実としては、韓国人のなかに眠る反日感情が、日本人が思っていたほどには和らいでいなかったというのもひとつの事実としてあるようですが、そのことに加えて、もうひとつの理由があると言われています。

それは政治です。

韓国ではいま「歴史清算」に関心が集まっています。歴史清算とは(ものすごく大雑把に言うと)戦中、及び戦後復興時の韓国政府、そして韓国要人の行動が適切であったかどうかを解明していこうというもの(具体的には、祖国を裏切って日本のために働いた韓国人の糾弾)なのですが、この問題が近時、韓国内において政局の材料とされているのです。

韓国内で二大政党を形成するウリ党とハンナラ党は近年、相手方関係者にかつて親日行為に関与した人物がいることを挙げ連ね、ダメージを与えようと躍起になっています。そんな状況ですから、どんな政治家も日本を擁護するような言動を取るわけにはいきません。彼等の言動が反日的なものになるのは必然とさえ言えそうです。

かつては竹島問題を取り上げることに消極的だった盧武鉉大統領が、このところ急に攻撃的になってきたのもそのせいだと思われます。彼の属するウリ党は、戦後復興時の大統領、朴正煕が取った復興政策を批判することでその娘、朴槿恵が党首を務めるハンナラ党を攻撃しようとしていたのですが、その調査結果が出るよりも先に、身内のウリ党幹部(の父親)の親日行為が続々と明るみに出てしまい(というより、ハンナラ党によって暴かれた)、当初の思惑とは反対に自らが厳しい立場に追い込まれてしまいました。

いま盧武鉉大統領が日本を叩く背景には、ウリ党や自らに対する国民の支持と信頼を回復しなければならないという背景が少なからず影響していると思われます。


4.韓国 国民の意識

韓国の国民は、恐らくそのほとんどが竹島(韓国名:獨島)を自国の領土と考えているでしょう。しかしそんな韓国国民のなかにも、特に知識層を中心に、竹島問題が国内政党の党利党略に利用されていることに冷めた見方をする人はいるようです。 ―― だからといって、日本の主張を正しいと思っているわけではないでしょうが。

韓国の政治家が竹島(韓国名:獨島)について何らかの発言するとき、日本のメディアは、韓国の民衆が日の丸を焼いたりデモをするような映像も併せて流すことが多いようですが、このような過激な反応が民衆の一部によるものであることは忘れてはいけないと思います。


5.日本の対応

日本では島根県の「竹島の日」制定以来、国民の間でも竹島の存在が少しずつ意識されるようになってきました。それでいながら過剰に感情的な反応がほとんど見られないことに、私は誇りを感じています。

私は基本的に、この問題が国民のナショナリズムを必要以上に刺激し、「日本民族主義 vs. 韓国民族主義」という対立構造を生むことを望んでいません。そうなることが日韓双方にとって少しの利にもならないと思うからです。

ただそんな私も、日本の国民は(あくまで理性的に)この竹島問題を認識しておく必要があるだろうと考えてます。もちろん各人がどんな意見を持っても構いません。たとえ「竹島は韓国の領土として認めてしまえばよい」と考える日本人がいても、私はいいと思います。

しかしいずれにせよ、日韓で問題となっている竹島(韓国名:獨島)の存在について我々が無自覚でいることは、日本国家や日本国民はもちろん、韓国に対しても失礼であるような気がします。


<関連>
竹島問題 1(謂われを考える)
竹島問題 3(そして物申す)

<参考>
竹島問題 竹島問題 様
竹島問題 外務省


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竹島問題 1(謂われを考える)

April 09, 2005  [ 外交問題 ]

1.領土問題って難しい

領土の帰属は地球上のあらゆる場所で、時代を問わずに争われてきました。人類史上多くの戦争が領土の争いを契機に起きていることを考えても、簡単な話し合いで解決するわけがありません。

そこで今回、複雑にこじれている竹島の問題について、日韓の主張をまとめてみます。


2.実行支配 ― 1905年 日本、竹島を島根県に編入

国際法上、土地に関する国家の領有権を判断する際には「実行支配の先後」が重要視されされ、また、この「実行支配」は、行政機関(中央政府、地方自治体)による、法的根拠を持ったものでなければならない、とされているそうです。

かなり厳格な要件ですね。

日本では古くから竹島周辺で漁をしていたようで、1656年には江戸幕府が竹島(当時の名前は松島)への渡航許可を出しています。一応は明確な「国家のアクション」と言ってよさそうですが、これを「実行支配」とまで呼んでいいかどうかはちょっと微妙です。

ただ、1905年1月28日まで下ると、日本は竹島を島根県に編入させる措置を取っています。ですから、少なくともこの時点では「竹島の実行支配」を認めることができそうです。


3.韓国の反論 ― 日韓協約、そして于山島

これに対して韓国側は、この編入の無効を主張しています。

竹島(韓国名:獨島)の島根県編入(1905年)は、韓国の独立性を奪った(つまり文句を言えない状態にした)日韓協約の下で日本が一方的にやったことだというのです。

そして更に韓国側は、竹島(韓国名:獨島)が6世紀頃から韓国の支配下にあったと主張します。古い韓国の地図に残る「于山島」こそが竹島(韓国名:獨島)であり、韓国からの渡航記録も残っているというのです。

以上の2点を、韓国は領有権の根拠として主張しているわけですが、特に日韓協約の絡んだ前者の問題は現在、韓国の反日思想の核となっているようです。韓国の教科書には必ずそうした記載があり、韓国の国民は一様にそれを学んでいます。竹島問題で韓国の人が熱くなるのもそうした事情が大きく影響していそうです。

<参考> 教科書問題(教科書検定)


4.私の疑問 その1 日韓協約と 1905年の(竹島)島根県編入の有効性

まず、1905年の島根県編入の有効性は、正直言ってわかりません。
竹島編入は 1月28日、日韓協約との関係でいうと、第1次日韓協約(1904年08月22日調印)と第2次日韓協約(1905年11月17日調印)の間になされたということになるようですが、

 この時期に韓国の独立性が実際にどの程度保たれていたのか?
 相手方国家の独立性が、領土の実行支配を語る上でどの程度影響するのか?

がわからない以上、何も言えません (個人的に、日韓議定書から日韓併合に至る日本の外交政策は様々な意味で愚策だったと考えていますが、この際、その是非は置いておきます)。


5.私の疑問 その2 于山島

ただ、6世紀の地図に残る于山島こそが竹島(韓国名・獨島)である、という韓国の主張については「いくらなんでも無理があるでしょ」と思います。

というのも、現在の竹島(韓国名:獨島)が、鬱陵島(現在も韓国の領土であり、6世紀当時の地図にも記載されている島)の南東に位置する小島(鬱陵島の3/1000)であるのに対し、昔の韓国の地図に記された「于山島」は、鬱陵島の西に位置する大きい島(鬱陵島の4/5程度)なのです。 ―― なお、6世紀の地図上で「于山島」が記されていた箇所は現在、海になっているのですが、地形をよくみると浅瀬のようになっているようです(かつての「于山島」が沈んだものなのではないか、と見る人もいるようです)。

この点に関して、いろいろな意見があって当然ですが、同意・不同意は別としても、私の言っていること(内容)は実際に地図を見てもらえれば理解してもらえると思います。


6.戦後〜現在

1905年 島根県に編入されたはずの竹島。それがなぜ現在のような状況下に置かれるようになったのかというと、これには第二次世界大戦が絡んできます。

ご存知の通り、日本は第二次世界大戦に敗れました。そして 1946年、GHQは覚書において日本の竹島における行政権を暫定的に停止します。 ―― いうまでもなく、この処分は日本に領有権を放棄させる法的根拠を持つものではありません。

この混乱期(1952年1月18日)に、韓国は一方的に韓国の領海を設定・宣言してしまったわけですが(李承晩ライン)、この領海内に竹島が含まれているのです。韓国はその後、日本の反対を無視して竹島に警備隊を送り込み、いまでもその支配を続けています。日本の漁船が近づくと彼らは威嚇射撃を行なうそうです。


7.ひとこと

以上は、日本人の私が、日本語で書かれた資料を元に書いたものです。
意図的に事実を曲げたつもりはありませんが、客観的な公平性が保たれているとも思いません。・・・というよりほぼ確実に「日本側に有利」なテキストになっています。

その点は留意していただきたいと思います。


<関連>
竹島問題 2(現在を考える)
竹島問題 3(そして物申す)

<参考>
竹島問題 竹島問題 様
竹島問題 外務省


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教科書問題(教科書検定)

April 07, 2005  [ 外交問題 ]

この時期になると決まって取り上げられる問題ですが、多くの人にとっては 「中国や韓国がやたらと怒ってるなぁ〜」という印象くらいしかないかもしれません。

ただ、これって実はとんでもないことなんです。

何が? というと、

中国や韓国の主張が。ということになります。 ・・・当り前ですが。

教育、特に初等教育(小学校〜高校における教育)の内容をどのように決めるかという問題は、それぞれの国家、そして国民の専権事項であり、他国の政府が口を挟むような性質の問題ではありません。おもいっきり 内政干渉 ですから。 これは世界的な常識で、いまの日本の教科書問題を他国(もちろん中国や韓国以外の国々)の人が聞いたら、驚きや呆れを通り越して「ひく」だろうと思います。

もしかしたら、中国や韓国の側には「教科書の内容は政府がしっかりと統制すべき」という感覚があるのかもしれません。

しかし、日本には言論の自由があります。

日本の教科書は民間の出版社がそれぞれの考えで編んでいるわけで、それがどんな内容であっても政府から出版が妨げられることはありません。ただ、それを教科書として使う場合に限って、教科書検定という名のチェックがなされるだけなのです。

ですから万が一、教科書検定の現場において文部科学省が、「この内容では近隣諸国の反発を招きかねない」というだけの理由で教科書としての不採択を判断するようなことになれば、言論の自由(表現の自由)、教育の自由、の観点から問題となるわけです。

私自身、たとえば扶桑社の教科書の依る立場を全面的に支持しているわけではありませんが、それを他国から文句を言われることについては黙っていられません。

「それを言うなら、あなたたちが作る教科書の反日アジテーションを削除してくれ」

と言いたいところですが、それを言ったら彼らはきっとこう言い返してくるでしょう。

「それは 内政干渉 だ」

と。

※ 付記 (2005.4.8)

韓国の教科書を取り上げられているサイトを見つけたので紹介しておきます。

図書館から韓国の歴史教科書を借りてきた Tomorrow's Way 様


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アメリカ産牛肉の輸入と狂牛病(BSE)

April 26, 2004  [ 外交問題 ]

1.アメリカのBSE事情

2003年 12月、アメリカでBSE(牛海綿状脳症 = 狂牛病)感染牛が見つかりました。これを受け、アメリカ政府は新たに対策を立てます。

 へたり牛の食用禁止
 生後 30ヶ月以上の牛について脳やせき髄などの特定危険部位の食品化禁止
 検査結果が出るまで食肉を流通過程に乗せない

これに、屠殺時の技術的問題、そして監視体制についての細目が加わるわけですが、正直なところ「えっ それだけ?」という印象です。

現在アメリカで実施されている検査とは 「ヘタリ牛と生後 30ヶ月以上の一部を検査する」 というものなのですが、この曖昧な基準はなんなんでしょうか? 自力歩行できないヘタリ牛をラインから外し、生後 30ヶ月以上の牛を 1頭でも検査しておけば、とりあえず満たされてしまう基準。 ・・・ゆるいです。ゆるすぎます。

またアメリカでは、感染予防の観点から肉骨粉の使用を禁止していますが(というより、この措置は日本より古くからなされています)、この規制についてもこれまで徹底されてきたとは言い難く、実際に規制後の「肉骨粉使用事例」がいくつも確認されています。ひとつ具体例を挙げると、米国最大の肉牛生産地のひとつであるコロラド州では、肉骨粉が規制されて 4年経っても、飼料製造業者の 1/4 以上がそれを知らなかったそうです。

科学の素養がない私が「どのような検査がなされれば牛肉の安全が保証されるのか」という問題を語ることはできませんが、少なくとも 「人間の健康」 という重大な問題に対する国家の態度として考えた場合、アメリカ政府に真摯なものをみとめることはできません。


2.日本に対するアメリカの態度

日本が求める 「全頭検査」 をアメリカ政府はにべもなく拒絶しています。日本は殊勝にも、技術提供や費用の一部負担まで提案しているようですが、効果がありません。

しかも驚くことにアメリカ政府は 「生後 30ヶ月未満の牛の危険部位除去」 まで拒んでいます。生後 30ヶ月未満の牛にBSE発症実例があるにもかかわらず、アメリカはその危険部位を食品として売り続ける、と言うのです。

もちろん、それをアメリカ国内で販売するだけなら文句をつける筋合いでもないのですが、アメリカは「その危険な牛肉を買え」と日本に猛烈な圧力をかけてくるのですから困ってしまいます。

「メキシコは日本よりずっと柔軟だ」なんて婉曲的に圧力をかけるなんてまだかわいらしい方で、今年の 3月には、WTO(世界貿易機関)への提訴までちらつかせはじました。

ちなみに、日本でBSEが確認された際、アメリカは即座に日本からの牛肉輸入を禁止しました。そしてその措置は、日本が全頭検査を実施して後も見直されず、現在に至るまで一切の輸入が禁じられたままです。


3.日本の世論

大雑把に業界の反応をみてみると、小売業界では「アメリカに全頭検査を要求すべき」という意見が、外食業界では「アメリカの提案に則した形で早期に解決すべき」という意見が強いようです。畜産業界が輸入反対であることは言うまでもありません。

国民の意見も多種多様なのでしょうが、私が不思議に思うのは、この問題をあまり重要視していないと思われる人が存外に多いことです。

アメリカでのBSE感染牛確認が報道されて以来、マスコミは連日「牛丼チェーン店の危機」を面白おかしく報道しました。その報道によると「多くの国民が『大好きな牛丼』にしばしの別れを告げるため牛丼屋に殺到した」ということのようですが、この反応が私には理解できません。

世界各地で狂牛病が確認されて後も 『アメリカ政府は不十分な対応しか取ってこなかった』 こと、そしてアメリカ産の牛肉はその解体処理方法の特性から 『本来安全であるはずの部位にも危険部位が混入している危険性がある』 こと、などが報道されているにもかかわらず、人々は 「そんな」 アメリカ産牛肉を体内に取り入れるため、牛丼屋の前に行列まで作ったのです。

巷を賑わせた報道のなかには 「日本政府は我々から牛丼という国民食を奪おうとしている」 とでも言いたげなものまで見られる始末。

かつて国内で狂牛病が騒がれた際には市場から国産牛の全てが消えたのに、今回の騒動のなか、アメリカ産牛肉は当り前のように人々の口の中へと消えたのです。


4.企業の対応

アメリカの狂牛病騒動が報道された際、私は当然のように 「米国産牛肉を在庫している企業はその廃棄を宣言するのだろうな」と考えました。一部の悪徳企業が「これは国産牛です」と嘘をついて売ることはあっても、まさかBSEに侵されているかもしれない牛肉をそのまま売ることはあるまい、と思ったのです。

しかし、周知のとおり、多くの外食産業企業は当り前のようにその在庫を客の口の中に放り込みました。

国内で狂牛病が騒がれたときには「当社で扱う牛肉は 100%アメリカ産だから安全です」とアピールしていた企業が、いざアメリカでBSE感染牛が確認されると、ただ黙々と在庫のアメリカ産牛肉を売りさばき、在庫が切れると日本政府に対して、アメリカ政府の条件を受け入れて一刻も早く輸入を再開するよう迫る。

いままで愛してきた企業(店)のそんな振舞いを見せつけられて、私は心底悲しかったです。

いずれ狂牛病の問題は解決を迎えるでしょう。しかし、いったん生じた企業モラルに対する不信感は決して消えません。


5.私見

やはり、かなりの確度で安全性が保証されない限り、アメリカ産の輸入を再開すべきではないと思います。もし日本政府が中途半端な状態で輸入を再開すれば、少なくとも私は牛肉を食べなくなるでしょう。

この問題について、いまでこそ世論は落ち着いた反応をみせていますが、いったん火が着いたら、それを沈めるのは容易ではありません。下手をすれば国内の畜産業、小売業、そして外食産業が決定的な打撃を受けます。


6.付記

現状において、BSEと人間の健康の因果関係は証明されていません。

しかし疫学的観点から、人間に発症するクロイツフェルト・ヤコブ病との間に何らかの関連性があるのではないかと疑われています。

先日、ニュージャージー州でクロイツフェルト・ヤコブ病にる 13人の死亡が報道されました。 100万人に 1人の割合でしか発症しない病気が極めて限定的な地域で多発した、というだけで十分異常な事態といえますが、さらにこの 13人は同一の競馬場に出入りしていたそうです (競馬場内のレストランが問題視されています)。

同州の上院議員が米疾病対策センターに調査を求めたそうですが、調査が実施される予定はありません。


7.付記 その2

かつて国内で狂牛病が騒がれた際、牛肉が消えたことで生まれた市場の「穴」は多額の税金によって埋められました。そして今まさに、この件が政界汚職問題へと発展しようとしています。



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